大正11年創業の千葉県、私市醸造。酒造りからはじめる昔ながらの酢作り。
越後の吟醸酒粕を使って自社で作った清酒になる前のもろみに米酢を合わせて搾ります。木桶に原料を入れ、長年受け継がれてきた酢酸菌膜を浮かべて2~3ヶ月かけゆっくり発酵させる「表面静置発酵」で仕込んで。
表面の酢酸菌膜が時間をかけてアルコールを酢に変えていく段階で液体が木桶の樹木の間を行き来し、発酵が終わりに近づくとほんのり杉の香りを個性にした酢ができあがりきます。
〈写真〉もろみに酢をあわせて搾った酒粕。画像は黒酢の原料を搾った後です。
まろやかな酸味にコクのある味わい。百年続けてきたから出せる木桶の醸す香り。
私市醸造では吉野杉を使った2メートルほどある木桶を使用しており60~70年ほど経過すると、いくら丈夫な吉野杉でも漏れてきます。そうすると箍を外して傷んだところを削って補修し組み立て直すと、さらに30~40年使用可能となり、仕込むほどに醸す香りや味わいを高みに上げていきます。
温度管理をしながら見守り、手間暇かけて発酵。
生きている酢酸菌を過保護に育てています。
木桶に仕込んだ酢は生き物です。冬になると乾燥したフレッシュな空気をいっぱい吸い込んで酢酸菌の動きが活発になりますが、寒すぎると菌の発酵熱が下がり風邪を引いてしまうので、木桶に藁を巻いて温度を上げていき酢酸菌と向きあっています。
[写真]藁を巻いて酢酸菌の発酵スピードを上げています。
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